三浦 喜明 さん

完璧主義者をやめて見えた新しい世界

トライアスロンでエントリーした初めてのWMGはどのような体験でしたか?

実は大会直前に肋骨を骨折し、体調も優れず、コンディションが最悪だったんです。試合中力が抜けていくような感覚に襲われながらなんとかゴールし、結果は9位でした。

痛みが強かった水泳では苦戦しましたが、得意なバイクでは善戦しました。プロとして活躍していたマイケル・トリーズ選手とバイクで競り合うことができたのも良い思い出です。本大会で、最悪な状況でも自分の強みを見出せることを初めて知りました。

それまで完璧主義で、私はいつでもトップを取ることを目指してきました。しかし、この大会を機にスポーツを長く続けていくことの重要性に気付いたんです。

その変化は、どうして生まれたのでしょうか?

振り返れば、トップへの挑戦は中学時代に始まりました。当時、クラシクギターにのめりこんだ私は、全国大会で優勝。19歳のころ始めたオートバイレースでも、アマチュア国内チャンピオンに君臨した過去があります。

トップを取ることは私にとって当然の目標でした。しかし、数多くのケガは、目標が高いゆえに生じるプレッシャーやストイックさから生まれるものです。メダルを目指せば目指すほど、ケガが増える。年齢を重ねて記録が落ちていくこともあり、このままではスポーツを続けられないと痛感しました。

今、私は100歳を超えてもスポーツを続けたいと願うようになりました。程よく休息を取りつつ、今の自分ができる最善を尽くすスタイルへシフトしつつあります。

トップという目標に替わって三浦さんを支えるものは何ですか?

ひとつは、国際大会への出場から生まれた仲間との絆です。私を『アニキ』と呼ぶ韓国の友人とは、お互いの国で遠征があればホームステイする、家族同士の付き合いになりました。

また、まだ見ぬ地へと旅することも好きです。各国の食文化を味わい、鉄道で旅する風景を胸に刻んでいく喜びは、何にも代えがたいものです。

私は国際大会出場を検討するとき、行ったことがない場所を優先します。WMGは毎回開催地が変わるので、それも楽しみのひとつです。

国際大会とスポーツそのものを楽しむ魅力を教えてください。

高齢化社会の課題として高齢者の自立が叫ばれていますが、生涯スポーツは心身両面において自立を支える糸口になるでしょう。

私の長女はトライアスロンの選手で、子どもを2人授かりました。初孫が30歳になる2047年、私は79歳です。私が長く競技を続けられれば、三世代でWMGに参加することも夢ではありません。

生涯スポーツが楽しいことを伝え、後世に見せていくことが自分の役目だと感じています。

また、自分の国の殻を破って外に出ることの大切さも伝えたいです。報道などで見る情報はバイアスがかかったもので、その国を理解することにはつながりません。

多くの人がスポーツを通じ、世界を自分の目で確かめ、心から楽しんでほしいと願っています。
メダルを目指して疾走。アジアパシフィックマスターズ2018ペナン大会の自転車競技で2冠達成、帰国後、孫との記念撮影。
メダルを目指して疾走。アジアパシフィックマスターズ2018ペナン大会の自転車競技で2冠達成、帰国後、孫との記念撮影。
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